――あの変形縦長で函入りの《バベルの図書館》シリーズに、私は昔からまぶしいような憧れを懐いていて、胸ときめかせて買った最初の一冊がこれ。期待にたがわぬ不気味さ、美しさで、訳文の端正さもあいまって、今でもこれが私にとってのベスト・バベル。

――ドイツ・ロマン派の本邦初訳短篇集。医師で神秘学者ケルナーの『オルラッハの娘』（一八三四）は、憑依妄想や精神錯乱を実録風に描いた点で、異様な迫力に満ちている。

――異郷を舞台にしたＳＦ仕立ての作品なのに、そこに描かれている世界がどこか懐かしさを感じさせる、風変わりな味わいの作品で、しかも何よりも翻訳が見事で、うっとり酔い痴れる。

――ファンタジーというよりはホラー寄り、文学より映画寄り。いろいろ言われたが、何が立項されているか眺めるだけでも楽しい。特にテーマ別項目が読み物として飽かせない。日本語版のみの付加価値の高さも見どころだ。

――輸入犬のショー・ルームでプチ・ブラバンソンを見たとき、サミュエル・Ｌ・ジャクソン（『アベンジャーズ』他出演）に酷似していることに驚き、思わず、お前がなぜここに？と叫んでしまったが、これが『アベラシオン』収録の一篇｢動物観相学｣の適用例である。バルトスシャイティスの博覧はなかなか骨が折れ、途中で投げ出すことが多いが、『アベラシオン』は楽しくついて行くことができた。